造成と宅地の安全|擁壁・のり面・地盤の基準と盛土規制法
造成と宅地の安全の基準は、地盤の沈下や崖崩れ、出水による災害を防ぐための基準です(第33条第1項第7号)。この号は、自己の居住用の開発行為を含むすべての開発行為にかかります。数値は施行令第28条と施行規則第23条・第27条が決めています。
この号の後段の表は、2023年5月の盛土規制法の施行にあわせて、盛土規制法の2つの区域の基準を指すように改められました。開発区域が盛土規制法の区域にかかるときは、都市計画法の基準に加えて、盛土規制法の技術的基準(第13条・第31条)にも適合させます。この頁では、2つの基準の重なり方、地盤の措置、擁壁が要るがけと擁壁の構造、申請の断面図に書くことを解説します。
- 根拠の条文
- 都市計画法 第33条第1項第7号、施行令 第28条、施行規則 第23条・第27条。盛土規制法の区域では、盛土規制法 第13条・第31条と施行令 第7条〜第17条
- 国の運用
- 開発許可制度運用指針 Ⅰ-5-1(一般的事項)・Ⅰ-5-6(第7号関係)。盛土等防災マニュアル(令和5年5月26日)を参考に具体の基準を定めることが望ましいとしている
- 申請の設計図
- 造成計画平面図・造成計画断面図・がけの断面図・擁壁の断面図
2つの基準の重なり方
第33条第1項第7号は、地盤の改良、擁壁や排水施設の設置などの安全上必要な措置が講じられるよう設計することを求めています。そのうえで、開発区域が盛土規制法の区域にかかるときは、工事の計画が盛土規制法の基準に適合していることを求めています(同号後段の表)。
| 開発区域 | 適合させる基準 |
|---|---|
| 盛土規制法の区域の外 | 都市計画法の技術的細目(施行令第28条、施行規則第23条・第27条)と、自治体の基準 |
| 宅地造成等工事規制区域 | 上に加えて、盛土規制法第13条(施行令第7条〜第17条の技術的基準と、資格のある者の設計) |
| 特定盛土等規制区域 | 盛土規制法第30条第1項の規模の工事なら、上に加えて盛土規制法第31条 |
国の運用指針は、開発許可権者が盛土等防災マニュアルなどを参考に具体の許可基準を定めることが望ましいとしています。あわせて、盛土規制法の対象にならない開発行為にマニュアルを当てはめるときは、2つの法の基準が違うことを踏まえ、基準が著しく過剰にならないよう注意を求めています(開発許可制度運用指針 Ⅰ-5-1)。計画地の自治体が、どちらの開発行為にどの基準を使っているかを、事前協議で確かめましょう。
地盤の措置(施行令第28条)
| 場面 | 講じる措置 | 号 |
|---|---|---|
| 地盤の沈下・区域の外の地盤の隆起 | 生じないよう、土の置換え・水抜きなどの措置 | 第1号 |
| 崖ができる | 崖の上端に続く地盤面に、特別の事情が無い限り、崖と反対方向へ地表水が流れる勾配を付ける | 第2号 |
| 切土の後に滑りやすい土質の層がある | 滑りが生じないよう、地滑り抑止ぐい・グラウンドアンカーなどの土留、土の置換えなどの措置 | 第3号 |
| 盛土をする | 地表水や地下水の浸透による緩み・沈下・崩壊・滑りが生じないよう、おおむね30cm以下の層に分けて盛り、層ごとにローラーなどで締め固める | 第4号 |
| 著しく傾斜した土地に盛土をする | 盛土の前の地盤と盛土が接する面が滑り面にならないよう、段切りなどの措置 | 第5号 |
| 地下水による崖崩れ・土砂の流出のおそれ | 区域の地下水を有効に排出する排水施設を設ける | 第7号 |
盛土規制法の区域では、盛土規制法施行令第7条の措置も加わります(特定盛土等規制区域は同施行令第30条で準用)。たとえば、盛土の内部に浸透した地表水などを速やかに排除できるよう、砂利などで透水層を設けること(第7条第1項第1号ロ)が求められます。どの措置が加わるかは、盛土規制法との関係と合わせて確かめます。
擁壁で覆うがけ(施行規則第23条)
次のがけのがけ面は、擁壁で覆います(施行規則第23条第1項)。ここでいう「がけ」は、地表面が水平面に対して30度を超える角度をなす土地で、風化の著しくない硬岩盤を除いたものです。
- 切土で生じる高さ2mを超えるがけ
- 盛土で生じる高さ1mを超えるがけ
- 切土と盛土を同時にして生じる高さ2mを超えるがけ
切土のがけは、土質と勾配で擁壁が要らないことがある
切土で生じるがけは、土質に応じた勾配以下なら擁壁が要りません(同第1項ただし書)。
| 土質 | 擁壁が要らない勾配の上限 | 擁壁が要る勾配の下限 |
|---|---|---|
| 軟岩(風化の著しいものを除く) | 60度 | 80度 |
| 風化の著しい岩 | 40度 | 50度 |
| 砂利・真砂土・関東ローム・硬質粘土など | 35度 | 45度 |
勾配が上限を超え下限以下の部分は、がけの上端から下方へ垂直距離5mまでなら擁壁が要りません(同第1項第2号)。小段などで上下に分かれたがけでも、下のがけ面の下端を含み水平面に対して30度をなす面より上に、上のがけ面の下端があるときは、上下を1つのがけとみなします(同第2項)。
このほか、土質試験などに基づく地盤の安定計算で擁壁が要らないと確かめた場合や、災害の防止上支障がない土地で擁壁に代わる措置を講じた場合は、擁壁を設けなくてよいとされています(同第3項)。擁壁で覆わないがけ面は、石張り・芝張り・モルタルの吹付けなどで、風化その他の侵食から保護します(同第4項)。
擁壁の構造(施行規則第27条)
- 土圧・水圧・自重によって、擁壁が破壊しない・転倒しない・基礎が滑らない・沈下しないことを、構造計算や実験で確かめる(第1項第1号)
- 裏面の排水をよくするため水抜穴を設け、水抜穴の周りなどには砂利などの透水層を設ける(同第2号。空積造など裏面の水を有効に排水できる構造を除く)
- 高さ2mを超える擁壁は、建築基準法施行令第142条を準用する(第2項)
透水層の「砂利等」には、一般に砂利・砂・砕石などが使われます。国の運用指針は、石油系素材の透水マットも、特性に応じた適正な使い方なら認めて差し支えないとし、使い方は「擁壁用透水マット技術マニュアル」(平成9年6月 社団法人全国宅地擁壁技術協会)を参考にすることが望ましいとしています(開発許可制度運用指針 Ⅰ-5-6)。
盛土規制法の区域では、擁壁は鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造・間知石練積み造などの練積み造とし(盛土規制法施行令第8条第1項第2号。特定盛土等規制区域は同施行令第30条で準用)、構造や水抜穴は同施行令第9条〜第12条に従います。高さが5mを超える擁壁の設置は、盛土規制法の資格を持つ者が設計します(同施行令第21条)。
申請の断面図に書くこと
| 設計図(縮尺) | 明示する事項(施行規則第16条第4項の表) |
|---|---|
| 造成計画断面図(1/1,000以上) | 切土・盛土をする前後の地盤面。高低差の著しい箇所について作る |
| がけの断面図(1/50以上) | がけの高さ・勾配・土質(2種類以上ならそれぞれの土質と層の厚さ)、切土・盛土をする前の地盤面、がけ面の保護の方法。擁壁で覆うがけ面は土質を示さなくてよい |
| 擁壁の断面図(1/50以上) | 擁壁の寸法・勾配、材料の種類と寸法、裏込めコンクリートの寸法、透水層の位置と寸法、擁壁を設ける前後の地盤面、基礎地盤の土質、基礎ぐいの位置・材料・寸法 |
擁壁の構造計算書や盛土の安定計算書は、この表にはありませんが、施行規則第27条の確認や第23条第3項の判断の根拠になる書類です。自治体の手引きで添付を求められることがあるので、事前協議で確かめましょう。
軟弱地盤の上の盛土は、沈下と安定を別に確かめる
軟弱な地盤の上に盛土をすると、盛土の重さで地盤が沈下したり、地盤ごと滑ったりすることがあります。施行令第28条第1号は、地盤の沈下や区域の外の地盤の隆起が生じないよう措置することを求めています。軟弱地盤の上の盛土は、地盤調査の結果から沈下量と安定を検討し、必要なら地盤改良などの対策を設計に入れます。検討の進め方は、関連サイトの軟弱地盤技術解析業務の教科書で解説しています。
まとめ
- 第33条第1項第7号の基準は、すべての開発行為にかかる。盛土規制法の区域では盛土規制法の技術的基準が加わる
- 盛土はおおむね30cm以下の層で締め固め、傾斜地では段切りをする。盛土規制法の区域では透水層なども加わる
- 切土2m超・盛土1m超・切盛同時2m超のがけは擁壁で覆う。切土は土質と勾配で例外がある
- 擁壁は破壊・転倒・滑動・沈下を構造計算などで確かめ、水抜穴と透水層を設ける。2m超は建築基準法施行令第142条を準用
- がけの断面図と擁壁の断面図は縮尺1/50以上。計算書は自治体の手引きで確かめる
参考にした法令・資料
- 都市計画法(昭和43年法律第100号)第33条第1項第7号(e-Gov 法令検索)
- 都市計画法施行令(昭和44年政令第158号)第28条(e-Gov 法令検索)
- 都市計画法施行規則(昭和44年建設省令第49号)第16条第4項、第23条、第27条(e-Gov 法令検索)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(昭和36年法律第191号)第13条、第31条、同施行令(昭和37年政令第16号)第7条〜第12条、第21条、第30条(e-Gov 法令検索)
- 国土交通省「開発許可制度運用指針」(最終改正 令和7年3月19日 国都計第193号)Ⅰ-5-1、Ⅰ-5-6(国土交通省の掲載PDF)
